山形の夏の名物「だし」とは?ご飯がすすむ万能おかず

山形県投稿日:2025/08/18

山形の夏の名物「だし」とは?ご飯がすすむ万能おかず

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日本の夏。容赦なく照りつける太陽と、まとわりつくような湿度に、食欲が失われがちになる季節です。そんな夏を元気に乗り切るための秘策が、山形県にあります。地元で愛され続けている夏の万能おかず、その名も「だし」と呼ばれています。

「だし」と聞くと、多くの人が鰹節や昆布から取るあの「出汁」を思い浮かべるかもしれませんが、山形の「だし」は全くの別物です。細かく刻んだ旬の夏野菜を混ぜ合わせた、さっぱりとしながらご飯がとまらなくなる料理です。この記事では、山形の夏の風物詩「だし」の魅力から、その歴史、作り方、無限に広がる活用法までを徹底的にご紹介します。

「だし」とは?山形の知恵が詰まった郷土料理

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山形の「だし」は、ナス、キュウリ、ミョウガ、オクラ、シソ、昆布などを細かく刻み、醤油などで味付けをした、「万能おかず」です。特に、夏野菜が豊富に収穫される時期に作られるため、山形の食卓に欠かせない夏の定番料理となっています。

この「だし」が生まれた背景には、昔ながらの生活の知恵が隠されています。夏の暑い時期でも、農家の人々は畑仕事をしなければなりません。しかし、夏は夏バテや食欲不振に陥りがちになります。そこで、手軽に手に入る旬の夏野菜を、ご飯がすすむように美味しく食べる方法として考案されたのが「だし」なのです。刻んで混ぜるだけというシンプルな調理法でありながら、野菜のシャキシャキとした食感、ミョウガやシソの爽やかな香り、そしてオクラや昆布のネバネバ成分が食欲を刺激します。

「だし」という名前の由来には諸説ありますが、野菜を細かく刻む際に「たたく」という動作から来ている説、「たたきあえる」という方言が転じたものという説があります。鰹節や昆布の「出汁」とは全く違う、山形ならではの文化が詰まった名前です。

 

「だし」の基本的な作り方と材料

「だし」は、基本的に包丁とまな板があれば誰でも簡単に作ることができます。決まったレシピがあるわけではなく、家庭によって入れる野菜や調味料は様々です。ここでは、最も基本的な作り方をご紹介します。

【主な材料】

  • ナス

  • キュウリ

  • ミョウガ

  • 大葉(シソ)

  • オクラ

  • 昆布(乾燥させたものを細かく刻むか、市販の刻み昆布)

  • 醤油、めんつゆなど

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【作り方】

  1. ナスとキュウリは細かくみじん切りにします。ナスはアクを抜くために、軽く塩もみをして水で洗うのがオススメ。

  2. ミョウガ、大葉、オクラも細かく刻みます。オクラは塩で板ずりをしてから茹でて刻むと、粘りがより引き立ちます。

  3. 細かく刻んだ全ての野菜と昆布をボウルに入れ混ぜ合わせます。醤油やめんつゆで好みの味に調えます。

  4. ラップをして冷蔵庫で数時間冷やし、味がなじんだら完成です。冷やすことで、野菜のシャキシャキ感が増し、より美味しくなります。

ご飯がすすむ!「だし」の万能な食べ方

「だし」の最大の魅力は、その万能さです。炊きたてのご飯にかけるのが定番ですが、それだけではありません。

  • ご飯のお供として:炊きたての熱々ご飯に、冷たい「だし」をたっぷりかけて。ご飯の湯気で香りが立ち、食欲を刺激します。

  • 冷奴の薬味として:冷奴に「だし」を乗せれば、立派な一品料理になります。豆腐の淡白な味わいに、野菜の風味とネバネバ感が加わり、夏の暑さにぴったりの涼やかな一皿になります。

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  • そうめんや蕎麦のつけ汁に:めんつゆに「だし」を加えるだけで、いつものそうめんや蕎麦が格段に美味しくなります。細かく刻まれた野菜が麺によく絡み、食感のアクセントにもなります。

  • 魚料理に添えて:焼いた魚や、カツオのたたきなどの刺身に添えるのもおすすめです。野菜の香りが魚の臭みを消し、さっぱりと食べることができます。

  • アレンジレシピ:だし巻き卵の具材にしたり、冷製パスタに和えたり、冷しゃぶのタレに混ぜたりと、アイデア次第で様々な料理に活用できます。

 なぜ「だし」はこんなにも愛されるのか?

山形の人々が「だし」を愛してやまないのには、いくつかの理由があります。

  • 栄養満点: 旬の夏野菜を一度にたくさん摂取できるため、栄養バランスが良いのが魅力です。

  • 手軽さ: 難しい調理法は不要で、包丁で刻むだけ。忙しい日でも簡単に作れます。

  • 食欲増進効果: 暑さで食欲がない時でも、ミョウガやシソの爽やかな香りと、きゅうりのシャキシャキ感が食欲を刺激します。

  • エコな料理: 畑で採れすぎた野菜や、少し形が悪くて売り物にならない野菜も、細かく刻んでしまえば美味しく食べられます。フードロス削減にもつながる料理です。

山形の夏を彩る食文化の魅力

「だし」は、山形の夏の食文化を象徴する存在ですが、この他にも山形の夏には美味しいものがたくさんあります。

・さくらんぼ:初夏から旬を迎えるさくらんぼは、山形を代表するフルーツ。特に「佐藤錦」は有名です。

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・玉こんにゃく:山形の祭りやイベントに欠かせないのが、玉こんにゃく。醤油ベースのタレで煮込んだ熱々を、串に刺して食べます。

・冷やしラーメン:山形は、冷たいスープで食べる「冷やしラーメン」発祥の地。夏の暑い日にぴったりの、さっぱりとした一杯です。

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終わりに:山形の風土と知恵が育んだ「だし」

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山形の「だし」は、単なる夏のおかずではありません。それは、厳しい夏の暑さを乗り越えようとする人々の知恵と、豊かな自然の恵みが詰まった、山形の風土そのものです。

炊きたてのご飯にかけるだけで、何杯でもおかわりしたくなる。そんな素敵な魅力が「だし」にはあります。もし山形を訪れる機会があれば、ぜひ一度、この「だし」の味を体験してみてください。

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