日本の四季折々の風習は、暮らしを豊かに彩る魅力的な要素です。今回ご紹介するのは、一年のうちで最も夜が長くなる日、「冬至(とうじ)」にまつわる特別な習慣です。
冬至は、太陽の力が一番弱まり、翌日から再び強くなっていく「一陽来復(いちようらいふく)」の転換点と考えられてきました。これは、古くから世界各地で見られる考え方ですが、日本ではこの日に「かぼちゃ(南瓜)」を食べ、「ゆず湯」に入るというユニークな風習があります。
この記事では、なぜ日本人が冬至にかぼちゃを食べるのか、その背景にある日本の文化や健康への知恵、そして冬至がもたらす心の安らぎについて、深く掘り下げていきます。
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1. 暦(こよみ)の上での大切な区切り
冬至は、二十四節気(にじゅうしせっき)の一つで、毎年12月22日頃にあたります。北半球では太陽が最も南に位置するため、昼の時間が最も短く、夜の時間が最も長くなります。
古来より、この「極まった闇」の時期を乗り越え、再び太陽の力が戻ってくることを祝う大切な日とされてきました。この考え方は、日本の神道や仏教とも結びつき、単なる天文現象ではなく、再生(リジェネレーション)と希望を象徴する行事として、人々の生活に根付いています。
2. 「一陽来復(いちようらいふく)」の願い
「一陽来復」とは、「冬が去り、春が来るように、悪いことが続いた後に良いことが巡ってくる」という意味の四字熟語です。冬至は、まさにこの願いを込めて、古くから宮中(きゅうちゅう、天皇の住まい)でも重要な祭事が行われてきました。
この日を境に運気が上向くと信じられていたため、冬至を祝うことは、「無病息災(むびょうそくさい、病気にかからず健康でいられること)」を祈り、新しい年への希望を抱く大切な準備期間でもあったのです。

いよいよ本題です。冬至の日にかぼちゃを食べる習慣には、日本の言葉遊びと、厳しい冬を乗り越えるための実用的な知恵が詰まっています。
1. 「運(うん)」を呼ぶ縁起物(えんぎもの)
日本では、冬至の日に「ん」のつく食べ物を食べると「運」が呼び込めると信じられてきました。これを「運盛り(うんもり)」と呼びます。
かぼちゃ(南瓜):かぼちゃは漢字で「南瓜」と書きますが、別名で「なんきん」とも呼ばれます。この「なんきん」には、「ん」が二つ入っています。
他にも、「ん」がつく食べ物として、にんじん(人参)、だいこん(大根)、れんこん(蓮根)、ぎんなん(銀杏)、きんかん(金柑)、うどんなどが一緒に食べられることがあります。
2. 厳しい冬を乗り切るための「健康の知恵」
「運盛り」の理由以上に、冬至にかぼちゃを食べることは、日本の人々が古来から持っていた「実用的な健康への知恵」の現れです。
栄養の宝庫:
かぼちゃは、夏から秋にかけて収穫されますが、貯蔵性に優れており、寒い冬の時期に新鮮な野菜が少なくなる中で、貴重な栄養源となりました。
特に、ビタミンA(β-カロテン)、ビタミンC、ビタミンEが豊富に含まれています。これらの栄養素は、免疫力(イミュニティ)を高め、風邪(かぜ)の予防に役立つとされています。
ビタミンAは、粘膜を丈夫にし、肌荒れを防ぐ効果もあるため、乾燥しがちな冬には最適です。
体を温める効果:
かぼちゃは、野菜の中でも体を温める効果が高い「陽性」の食べ物とされます。寒い冬の日に、温かいかぼちゃを食べることで、内側から体を温め、冷え(クールネス)から体を守ることができました。
冬至の日の風習は、かぼちゃだけではありません。多くの家庭や銭湯(せんとう、公衆浴場)では、「ゆず湯(ゆずゆ)」に入る習慣があります。
1. 邪気(じゃき)を払う香り
ゆず(柚子)は、強い香りを持ちます。日本では古くから、香りの強いものは「邪気(バッド・スピリット)」を払う力があると考えられてきました。冬至の日にゆず湯に入ることで、一年間の穢れ(けがれ、汚れ)を清め、新たな年を迎えるための準備をするという意味があります。
2. 銭湯文化と健康効果
ゆず湯は、湯船にたくさんのゆずを浮かべるだけで、その香りが浴室中に広がります。
リラックス効果: ゆずの爽やかな香りは、アロマテラピー効果があり、一日の疲れを癒し、深いリラックスをもたらします。
血行促進(けっこうそくしん): ゆずの皮に含まれる成分が、肌を刺激し、血の巡りを良くするため、体が温まり、冷え性(ひえしょう)や関節の痛みを和らげると言われています。
かぼちゃを食べて、ゆず湯で温まる。これは、日本の人々が「食と風呂」という日常の行為を通じて、心と体の健康を維持しようとする、洗練された知恵なのです。
冬至の風習は、単なる古い習慣ではありません。そこには、現代に生きる私たちにも通じる、日本の魅力的な価値観が詰まっています。
1. 自然との調和(ハーモニー)
日本人は、季節の移り変わりを繊細に感じ取り、それを受け入れて生活に取り入れることを大切にしてきました。冬至の風習は、「自然のサイクル(巡り)」を意識し、その中で自分たちの「運命」や「健康」をコントロールしようとする、自然との調和の精神を表しています。
2. 家族の絆(きずな)を深める時間
冬至は、家族全員で温かいかぼちゃの煮物(にもの)を囲み、一緒にゆず湯に入る、家族の絆を深める大切な機会です。寒い夜に、家の中で温かい食べ物と湯船を分かち合う時間は、日本の家庭が大切にする「安らぎ」の象徴です。
3. シンプルな生活の豊かさ
かぼちゃとゆず。どちらも特別な高級食材ではありません。身近な自然の恵みを使い、少しの工夫で「運」と「健康」を呼び込もうとする、シンプルながらも豊かな生活の知恵が、この冬至の風習には凝縮されています。

いかがでしたか?「冬至にかぼちゃを食べるのはなぜ?」という素朴な疑問から、日本の長い歴史の中で培われてきた、言葉への敬意、健康への配慮、そして自然を愛する心が見えてきます。
もしあなたが12月に日本を訪れる機会があれば、ぜひスーパーでかぼちゃを買ってみてください。そして、銭湯や旅館でゆず湯に入り、日本の人々が大切にしてきた「冬の小さな幸せ」を、肌で感じてみてください。
これらの体験を通して、日本の文化が持つ奥深さと、その魅力にさらに気づくことができるでしょう。
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